アメリカでの経験が今に活きていると思う事は何ですか。

　ITの重要性だと思います。僕が学生をしていた同時、日本にはカーナビは普及していましたが、アメリカにはなかったんですよ。GPSサービスは、一応存在はしていましたが、十分に整備されていなかったです。そんな中、当時最新のナビシステムっていうのが「マップクエスト」というサービスでした。

　このサイトに出発地と目的地の住所を入れればルートにおける目印となるものを教えてくれるってサービスなんです。でも結局印刷した紙を見て運転するから目印なんか見逃すし本当に迷うんです。気が狂いそうになりながら目的地まで行っていましたね。

　その経験をして日本に帰ってきた時にスマホとタブレットが誕生して、Googleマップも出て、移動に関しての不便さはどんどん解消されました。インターネットがいつでも手元で開けると言う時代の変化を見て「これは来たぞ！」って思いましたね。そこで2014年からタクシーのクラウド管理を始めました。

　当時は大手IT企業がトラック用に運用していたシステムをタクシー風に改良してもらって使っていました。でもテクノロジー会社が作るソフトウェアは無駄があったり逆に機能が足りなかったりするんですよね。だから現場を知っている人がソフトウェアを作ろうってことで最近立ち上げたベンチャーが(株)電脳交通です。

ソフトウェア開発という事は、エンジニアを採用したのですか。

　そうです。カーナビのマップ作成をしていた優秀なエンジニアが徳島にUターンすると聞いて、猛烈にアタックしまくりましたね。「僕とおったらおもろい事出来て儲けられるぞ」って言ってね。彼が来てくれたのでソフトウェアはちゃんと完成しました。今後は全国的に普及させたいと思っています。

徳島から全国展開ですか。

　そうです。ここで面白いのが日本最大手のタクシー企業が、タクシー業界の最先端と言われるJapan Taxiってベンチャーを新しく立ち上げました。そこがやっているのがまさしく僕たちと同じことで、インターネットを利用したタクシー専用管理ソフトの開発でした。

　その会社が言っていたのが「緩やかに衰退しているこの業界ではもう儲ける事は難しい。今後はタクシー専用管理ソフトを供給する会社として業界を独占しよう」ということでした。考え方も僕たち一緒で、もうそこでしかこの業界で生き残る術はないって思ったんです。

　日本の最大手が最先端の事をしていて、業界売上ワースト2と言われる徳島の一番小さい企業の僕たちがまったく同じことをしている。僕たちは四国とか西日本とかじゃなくていきなり全国相手に下剋上を仕掛けているんですよね。

今後IT企業が参入してくる可能性に対してどう思われますか。

　僕たちはタクシー会社でIT企業だから、現場経験って意味で圧倒的な説得力がある。その点に競合優位性があります。IT企業と違い、タクシー会社にニーズ調査しなくても経営者が何を求めているのかが分かっていることが大きな強みです。

　新しいテクノロジー系の企業が来て「こっちの方が最新で合理的ですよ」って言ってもなかなかニーズ合う商品は作れないでしょう。更には業界に対する発言力も違いますよね。成熟した業界だからこそ、昔からコツコツやってきた企業が負けにくい仕組みになっていると思っています。

今後の展開が楽しみですね。

　そうですね。今はエンジニアと2人3脚で頑張っていますが、徳島起点で北は北海道から南は沖縄まで、全国のタクシーの配車をやっていきたい。それを可能にするシステムを僕たちは作りました。今後このシステムを全国展開していくことが僕のビジョンです。

では最後に近藤社長が徳島で経営する上で大切にしている事は何ですか。

　『仕掛ける』という事です。地方の企業は緩やかに衰退しつつあります。これは企業が死に向かっていることを意味します。ヒト・モノ・カネと言う資源が乏しい地方は今後どんどんチャンスに恵まれなくなっていきます。

　そのときどうするか考えたときに県外とか海外に『仕掛ける』必要が出てきます。もっと言うと僕たちの次の世代の為に、今まだ元気のある僕たちが『仕掛けて』いかなければ地方は終わってしまいます。『仕掛ける』それが僕たち地方が生き残っていく為の唯一の手段だと考えています。

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