今後具体的にやっていきたいことは何ですか。

　現在、神山塾が10期を迎え、卒業生が120～130人いるので、仕組みとしては出来上がってきています。また、都会の若者と田舎がどうつながっていくかのニーズは分かっています。なので、その世界版を作りたいと思っています。具体的に言えば、『世界に向けての旅と学びの仕組み』を作りたいです。2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降には、スペインやイタリアで、「日本で学びませんか」とやっているイメージです。

　だから、社員は旅行業やキャリアコンサルタントなど必要な資格を取得する準備をしています。2年後は、日本で学びたいという世界の若者が、僕らの独自のルートの中で学びに来ます。例えば、国内に来ている留学生の大半は東京、大阪などの都市部に滞在しています。その約3割の留学生が、地方に行きたいけれど、ネットワークがなくて行けていないというデータもあるようです。リレイションの学びと旅「Learning Journey」を提供することで、世界と地方を結ぶネットワークを作りたいと思います。

ずばり、リレイションの成功の秘訣は何ですか。

　成功というか、継続している理由として、1つ目は、「計画的無計画」です。リレイションがどうして継続しているのかといえば、たまたまなんです。僕らのスタンスは、『計画はあるけど柔軟に変えていける』です。それが、成功というか、続いている秘訣だと思っています。

　2つ目は、「フローマネジメント」です。好きなことをしていたら没頭できる状態をフローと言うのですが、その人が持っているスキルとチャレンジのバランスを取ってあげるマネジメントがあります。当時は、研修を直感でやっていました。でも、今はフローマネジメントといった心理マネジメントや行動経済学の理論を基にモチベーションを計算として盛り込んでいます。行動経済学とか社会心理学の理論と共に、直感的な新しい発想を駆使して事業を作っています。

　3つ目は、「イノベーションの起こし方」です。イノベーションとは、直感と論理のはざまで生まれます。論理だけでも直感だけでもイノベーションは生まれません。ほとんどの日本人は、論理だけを考えているので、イノベーションが生まれません。僕は田舎人材育成事業を直感で始め、10年かけて直感と論理のバランスを取りました。実践したことを論理としてイノベーションにするには、直感でやった神山塾や農業体験がなんとなく若者にとっていいのではなく、なぜ大事なのか言語化できることが大事です。その上で、どういう人を地域に呼び寄せるか、具体的にターゲットを絞ることが戦略を立てる上で大切です。

『働く』とは祁答院さんにとってどのようなことですか。

　働くことは、生きている役割、社会に対する役割です。好きでやっているので、嫌だったら働きません。誰かの役に立てたら嬉しいです。できれば、それが社会にいい影響を与えられるような実績を積み重ねるために、働いています。

学生へのメッセージをお願いします。

　物事の言葉の意義、定義を捉えた上で、自分の価値観を高めることが大事です。「平等」と「公平」、「個性」と「個人」、「自律」と「自由」、「責任」と「義務」の8つの言葉の概念と、それぞれの言葉の相関関係は何なのかを自分の中で整理したらいいです。そうすることで、物事の見え方は変わってきますし、見極めようともがくことで見えてくるものがあります。

　なぜなら、これからは自分の価値観、ものさしで生きていく時代です。自分の「観」を高めるために、アルバイトや海外旅行等、色々な経験をすべきです。辛いことや失敗もあるけど、失敗することで方法が分かるから、次失敗しません。もっと言えば、失敗なんてありません。失敗は、自分のありたい未来、人生に向けて必要な実験、経験だと思います。

　僕も学生時代は劣等感を感じていましたが、色んないろいろな大人と出会い、経験を積むことで社会勉強ができました。ぜひ、自分の『ものさし』で人生を決められる人になって下さい。

取材後記

　祁答院さんの第一印象は、笑顔が素敵な「優しそうな方」でした。お会いすると、祁答院さんが「事務所の鍵を忘れた！」ということで予定を変更して、近くの喫茶店で朝ご飯を食べつつ、話をお聞きすることになりました。真剣な話をしつつも、楽しく話をしてくださる祁答院さんのお陰で、私の緊張も少しずつほぐれていきました。社員さんが事務所に到着したということで事務所に移動し、インタビューを始めると、すごく丁寧に分かりやすく話してくださりました。

　喫茶店と事務所でのインタビューは、総じて5時間半程で、予定の時間を大幅に超えてしまいました。今回の記事を作成する際もいい話が多すぎて、「削るのが勿体ない！」と思いながら、泣く泣く削りました。今回のインタビューを通して、とても興味深いお話をお聞きすることができ、普段大学では知ることのできない学びを得ることができました。祁答院さんの貴重な時間をいただき、ありがとうございました。

会社概要

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